風を纏った大剣が舞い、全て“陰”を標的に、空を斬る。


死神は陰から無数の手と大鎌を繰り出し、その大剣を払い落とす。


無数の攻防の中、成二は足元に風の気を集中させ、前屈みになる。


明人がその真意を悟った時には、既に成二が間合いに入っていた。


成二が手にしていた大剣が、明人の首へと向かう。


明人はそれを跳んで避けると、真下に立つ成二に、気で増幅した突きを放つ。


攻撃の反動から、成二は避ける体制に無かった。


成二自身、それを悟ったのだろう。自らを風の中心に定め、局地的な暴風を巻き起こす。


明人の一撃は、大きな力故に、大きな反動となって、明人に大きな隙を生んだ。


成二は間髪入れずにそのまま地を蹴った。


向かってくる成二に対して、明人の纏った死神が自動的に壁になる。


成二の大剣は死神と交差し、二つの力がぶつかって、波動が広がる。


「俺は囮だ」


成二が口を開く。


その意味を理解した明人が、真上を見上げると、成二の持つ大剣以外の107本の刃が明人を向いていた。


「貴様…!」


明人が歯を食いしばる。そして成二は、風の気を更に膨張させ、呟いた。


「嵐月時雨」