今宵、月の照らす街で

「せぇじ?」


長く続いた沈黙。それを破ったのは師匠だった。


「私は、貴方に何か伝えられたかな…?」


明奈は背を向けたまま、静かに弟子に語りかける。


「明奈さん?」


今まで聞いた事がなかった師の声。


「貴方を弟子にしてから今まで…きちんと導けたのかな」


明奈の様子が、どこかおかしい気がしてならない。


「多分…今回は、AAAの陰を倒せば全て終わりとかじゃない気がするの」


明奈が振り返る。


「せぇじ。何がなんでも無事でいる事。これが今回の任務中の命令だからね」


「…了解です」


返事を聞いた明奈は、安心した顔を見せた。


「さ。行きなさい」


また背を見せる明奈。成二は明奈の肩を掴んだ。


「…?」


「俺にそう言って、自分が死ぬとかは無しですよ?」


「…!」


成二のまっすぐな視線が、少し驚いた明奈の視線とぶつかる。


明奈は優しい笑顔で頷いた。


成二は名残惜しげに明奈の肩を離して振り返り、千鶴達の後を追った。