明奈が案内した場所は、丸ノ内オフィス街の裏通り“Lily”という、小さな店だった。


「ここ、5時に喫茶店からレストランバーになるの。もう5時になるから、ここにしましょ」


扉を開くと、蝋燭の淡い炎がレトロな空間を彩っていた。


「いらっしゃいませ。お二人ですか?こちらにどうぞ」


「あら、明奈、成二?」


窓際からの聞き慣れた声に二人は振り向いた。


「千鶴に…葉月?」


「奇遇ね。ここ、いかが?」


千鶴が席を勧める。二人はその言葉を断ることなく、その席に座った。


「千鶴、何してたの?」


「マワリよ」


「あ」


千鶴の一言に、成二は即座にびくっとなる。本来なら自分が行かなきゃならない任務だったにも関わらず、普通通り学校に行ってノンビリしてた。


「す…すみません」


「いいのよ。葉月の方が仕事が早かったわ」


「ぐっ…」


「冗談よ。でも、葉月もアナタに負けず劣らずだったわ」


頬杖ついた千鶴が微笑んだ。