「明奈さん」


少し照れた顔になる成二。


「心配してくれてありがとうございます…」


意外な反応だった。少なくとも、師弟関係を結んだばかりの時には到底考えられなかった言葉だ。


明奈のマンションで、一度感じた成二の変化は、間違いなく成長の証だった事に、明奈は微笑まずにいられなかった。


「成長したね、せぇじ」


「?」


その言葉に不思議そうに首をかしげる。


「なんでもないよ」


明奈は不思議がる成二をよそに、先に、てくてくと歩いていく。


「あ…明奈さん…待ってくださいよ」


「早く来なさい、夜ごはん、食べに行きましょ」


明奈の自由気ままな姿に、成二はいつも素直に羨ましいと感じていた。


―――俺も…力を抜いてもいいのかな


使命だとか、運命だとか、強くなりたいとか、いつでも思考を止めた事は無かった。


それはそれでいいのかも知れないけど、たまには気の向くままに、好きなようにしてもいいのかも知れない。


明奈を見て、成二は自然に感じとった。