千鶴の行きつけ、丸ノ内オフィス街の裏通りのカフェ。


葉月はレモネードを、千鶴はロイヤルミルクティーを注文し、口に含む。


「せーちゃん、元気ですか?」


「えぇ。最近はスランプみたいだけどね」


「スランプ?」


葉月が顔をしかめた。それはレモネードの酸味のせいか成二のスランプの為かはわからない。


「政都内で出現した半鬼を祓ったのは、ほとんど成二なのよ」


葉月には、その言葉の裏の、真の意味が伝わる。


半鬼を祓うと言うことは、人間を殺すと同義である、と言う事実。


成二の、両親の死に対するトラウマを知る葉月は、成二が最も嫌う“死”の名を持つ終幕を、彼自身が降ろしていると言う事が信じられなかった。


「大丈夫なんですか?」


レモネードが入ったグラスを握る葉月の力が強くなる。レモネードの冷感が一層強くなった気がした。


「さぁ?彼の問題だから」


知らん顔でロイヤルミルクティーを口にする千鶴の姿に、葉月が明らかに不満な顔を向ける。


「酷いですね」