渋谷、池袋、新宿、原宿、浅草、上野。


行き当たりばったりのプランで都内を練り歩き、小さな魔を祓う。


時間は既に午後4時。


今日は陽射しが強かった事もあって、服が少し汗ばんだ。


「これくらいかな?」


千鶴は魔に符を貼って、今日のマワリの終わりを告げた。


「お疲れ様です…」


「葉月、喉渇いたでしょう?カフェにいきましょ」


「はい」


疲れた姿を見せる葉月だが、この小さな任務で、葉月のセンスが十分にあると言う事が伺えた。


陰の探知レベル、符に送る力の加減、純粋な気の力。


須佐之男の末裔・小龍沢の荒ぶる風とは違う、静かなる月を包む“空”の気。


―――さすが月那主宮の血筋ね


今はまだ千鶴の背中を歩く葉月だが、近い将来にはその背中を捕らえ、やがて追い抜く姿が容易に想像できる。


明奈が政都に移ってきた時、『月那主宮の末っ子は歴代宗家を越える器』だと話した事がある。


かつては信じられなかったその言葉が今、事実だったと言う事に、千鶴は確信を得た。