今宵、月の照らす街で

ソファから離れて、寝室から持ってきたタオルケットを成二にかけた。


寝顔を見てると、バーカウンターに置いていた、明奈のケータイが鳴った。


今は午前2時。


―――キャバのお客様かな?


成二を起こさないよう、寝室に入って電話に出る。


「もしもし?」


『千鶴だけど…』


「千鶴?こんな時間にどうしたの?出動命令?」


『違うの。今、明奈の部屋の前なの。入れて頂戴?』


「急な話ね。待ってて」


ケータイを持ったまま、玄関を開くと、私服姿の剣一郎と直仁、千鶴が立っていた。


「明奈さーん!きょーもお綺麗れすねー」


剣一郎は酔ってるみたいで、酒のにおいをプンプンさせたまま、明奈にハグしようと近寄る。


それを見た直仁が剣一郎を抑えてた。


「千鶴…私は部屋でキャバする気はないわよ?」


「ゴメンね…反省してるわ」


申し訳なさそうな顔をしている千鶴も、頬を少し赤らめている。多分少し飲んでいるのだろう。


玄関から見えた夜空は曇っていて今にも泣き出しそうに見える。


「どうぞ。雨降り出しそうだし」


そう言って玄関を解放すると、直仁が剣一郎を引っ張りながら「お邪魔します」と小さな声で呟いた。