今宵、月の照らす街で

己の決意。
己の不安。
己の非力さ。
呪われた運命。
血塗られた宿命。
姉達の期待に応えられない自身の姿。


元々、感情の豊かではない成二が、嗚咽を漏らしながら全てを打ち明ける。


たくさんの後悔と迷い、哀しみが、成二の心を知らず知らずの内に蝕んでいたのだろう。


どんなに明奈が正しく、幸せな道へと導いても、支配する負の感情は強いモノだ。明奈が兄を自身の手で殺した時、同じ感情に魅了された事を思い出す。


明奈の握った手は、震えが止まらない。


その感情がわかるから、成二の手を絶対離さないよう、指を絡めて、話しが終わるまで黙って聴き続けた。


成二が全てを打ち明け終えた時、しばらく何も言わずに感情を抑えようとしていた。


「明奈さん…ゴメンなさい…俺…弱気になってる…皆、守ってくれるって…俺達の血族に誓ってくれたのに」


手を握る成二の力が少し強くなる。


「最低だ、俺…」


吐き捨てる様に吐いた言葉に、明奈は無意識に成二を抱きしめた。


「馬鹿弟子…アナタが最低だったら私は見捨ててるわ」


身体の震えが直接、明奈の身体に伝わる。


成二が何を思っているのかは、わからない。


だから、明奈は弟子の感情が鎮まるまで、ずっと抱きしめた。