今宵、月の照らす街で

明奈の家に来るのは、西蓮地の事件以来だ。


明奈の部屋は、北欧デザインのフロアランプとペンダントランプで淡く照らされ、気品のある黒革ソファが部屋のメインを飾っていた。


「くつろいで」


明奈はバーカウンターにプラダのバックを置く。


「着替えてくるわね」


キィ、と小さな音と共に扉が開き、明奈は暗がりの部屋へと足を運んだ。


ソファの前に置かれたローテーブルには、猫を抱いた明奈の写真がある。


―――どこかのカフェだ?


「かわいいでしょ?ハニーって呼んでくれるの、このコ」


「え?」


明奈はピンクのバスローブ姿で戻って来た。


「え?だって…猫…」


「喋るの、その猫ちゃん」


こんな超現象を、「そうなんだ」の一言で納得してしまうのは、まさしく職業病。


成二は写真に視線を落として、ローテーブルに写真を戻す。


「それで?何かお話があるんじゃないんですか?」


大きな冷蔵庫を開いて、何かを探していた明奈の身体がピクっとなる。


「ばれた?」


そのまま冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出して、一口だけ、口に含んだ。