今宵、月の照らす街で

嵐月時雨で貫かれた死体は、何故か少し微笑んでいる様に見えた。


―――なんで…?


途端、成二を吐き気が襲う。成二は耐えられず、膝をついた。


―――俺はアンタを…殺したんだぞ?


「せー君!」


うずくまっていた成二の背を、はるかの暖かい掌がさする。


「大丈夫?」


はるかが心配そうに成二の顔を覗き込む。


「俺は…人の闇を斬る刀…そう割り切れば楽だなって…そう思ったけど…」


魔を斬る刀。


それは、成二が行き着いた、自分を維持する為の考え。


それは、成二自身が両親を斬った日に、皮肉にも唯一学んだ事。


だが、今、半鬼を…いや、憑依されただけの人を、一つの武器として殺した筈なのに、最期の笑顔が頭から離れない。


「きっと嬉しかったんだよ」


はるかが呟く。


「キミが最期に言った言葉…半鬼に対してじゃなくて、この人に対して言った言葉。きっと嬉しかったんじゃないかな」


はるかが微笑む。


「無情になる事も大事。でも、こういうのを抱えて生きるのも大事だよ?キミがキミである為にも、ね」