今宵、月の照らす街で

「斬景煉舞[ザンケイレンブ]」


繰り出した斬撃は、全て半鬼の身体に刻まれる。


それが近かったため、返り血が成二の顔を塗る。半鬼から吹き出す赤い血飛沫は、唯一人間だった事実を引きずっていた。


近接戦闘術で最大限の効果を発揮する斬景煉舞。


接近すればする程、その斬撃の衝撃・剣閃は鮮明に刻まれ、煉獄を連想させる程の熱を帯びた剣となるが、ここまで大きなダメージを与えた事は無かった。


―――これが真の斬景煉舞…!


「オアァアァァ…!!!」


半鬼から呻き声が漏れる。


人に鬼神を強制憑依させた異形のモノから、先程とは比べものにならない程の強い殺気がほどばしる。


―――せめてもの慈悲に…俺は彼を殺さなければならない…


そう思った途端、剣を握った手が奮えだす。


しかし、人に死の厄災をもたらすモノを祓う事が退魔の血族の宿命。


「生きてるうちに会いたかった。例えどんな形であれ、だ」


108の大剣を全て換装し、半鬼に向ける。


そこから先は無情にならなければならない。


「嵐月時雨」