「実はさー、俺んちも
母さん もう死んでるんだ」


『…えっ!?…』


「けっこう俺んちも大変でさー
俺が二歳ぐらいの時かな、
父さんと母さんが離婚したんだ。
俺は母さんに引き取られて
母さんは ひとりで
俺を育ててくれた。
けど、俺が中学一年の時
母さん 病気で
死んじゃってさ。
ひとりになった俺は
中学を卒業するまで
父さんと暮らす事になった…。
もう10年も会ってなかったし、
第一…父さんの事なんて
まったく覚えてなかった。
俺と母さんは
母さんの旧姓に戻したから
名字だって違ったしさ…
まったくの《他人》と
暮らしてる感じだった。
だから 早く家を出たかったんだ…
んで、家を出るために
寮がある高校を選んで
一応 父さんに聞いてみたんだ。
《家…出てもいいか?》って。
そしたら 父さんは
俺の気持ちをわかってて
くれたみたいで…
反対しなかった。
学費とかは、俺が卒業するまで
父さんが払うって言ってさ、
払ってもらってるんだけど…
俺…高校入ってから
父さんに一度も会ってないし
連絡すらしてない。
だから俺も 今現在は
家族って呼べるような人が
いないっつー訳よ。」