私の数メートル先に

お母さんがいる…


私は思わず
『お母さんっっ!!』と
叫んで

駆け寄ってしまった。


『お母さん!!』


「……!!!
エリ!!
ど、どうしたの…!
こんな所で…」

『あ…
今ね、買い物に
来てるんだ。』

「買い物?
そうなの…。
それにしても
久しぶりねぇ。
元気にやってるの?」

『うん…なんとかね!』

「買い物って
ひとりで来たの?
友達と一緒?」


私は なんとなく
《彼氏》とは言えなかった。

とりあえず
ゆうじさんを呼んでこようと
後ろを 振り返った。




『…ゆうじさん…!?』

私の目に
飛び込んで来たのは
人々が行き交う
道の真ん中に
しゃがみこんで
頭をかかえている
ゆうじさんの姿だった−−

慌てて
ゆうじさんのもとへ
駆け寄り
『ゆうじさん!?
どうしたの!?大丈夫!?
具合悪いの!?』

チラっと見えた
ゆうじさんの顔は…
青ざめていた・・・


何…?
何がどうしたの…?

『ゆうじさん!』
何度 呼び掛けても
ゆうじさんは
ずっと
しゃがみこんだままだ…

そんな様子を見ていた母が

静かに ゆっくり…

こっちへ歩いてきた。

そして…


しゃがみこんでいる
ゆうじさんの頭上から
ボソっと言った。



「…久しぶりねぇ
ゆうじ…」