束になって括り付けられているチラシを、一枚引きちぎった。
最近、あちこちにマンションを乱立している建設会社の物件だった。
ネットでの噂では、あまり良質ではないとの書き込みが多く、評判は良くない。
写真でみる限り、外観は高級マンションを思わせ、テレビCMも数多く流している事から物件見学者は多いらしい。
だが百夏は、その類のものが好きではなかった。
『テレビCMでおなじみ!』
『タレントの○○もブログにて絶賛!』
『人気のため品薄中!』
だから、何だというのだ。
本当にいいものは、安っぽい宣伝など必要ない。
そんなコピーを見たら、むしろ避けている自分は、ただのあまのじゃくかもしれない……と、思わなくもなかったが。
ため息をついて、広告を丸めた百夏の肩を、突然一人の男が静かに叩いた。