「繁人は、なんで北海道を離れたの?」


自分が離れた理由すらわからないのに、それもおかしな質問か――。

けれど、搭乗中の間に少しでも繁人と会話を重ね、繁人のことを知りたかったのだ。


「俺は元々、こっちの人間だったからね。

転勤が解けた4年前からもう戻ってるんだ」

「じゃあ……もしも、あたしと結婚していたら、こっちに連れて来るつもりだったの?」

「そうなっていただろうね。

けど、俺らの間には、本格的に結婚話が出ていたってわけじゃなかったんだ。

あくまで、いずれ結婚したいねって話に対して、モモカが頷いてくれた。子供の口約束みたいなものさ」

「――そっか」


自分は一生、一人の人生だと思っていたのに。

過去だとは言え、そんな風に思ってくれた人がいるなど想像もしていなかった百夏は、妙に恥ずかしくなった。


「モモカはなんでこっちに……って、わかるわけないよね、記憶にないんだから」