「それ、逆効果だって分かってる?」
怪しく笑う顔が、暗がりに浮かび上がってきた。
目が慣れてきたんだ。
あたしより15㎝は高い身長に、無造作にセットされた黒髪。
黒いスーツのシャツが少しはだけている。
俗にいう、イケメンってやつだ。
少し長めの前髪の隙間から覗く切れ長の目がしっかりとあたしを捕えている。
かっこいい…って馬鹿!
あんなことされておいて…。
最低だっ。
こんな奴に、一瞬でも目を奪われてしまうなんて。
「ほら、乗れよ。送ってってやるから」
あたしを車の前まで誘導し、車の扉を開ける。
はいぃぃぃ?
いやいや!
普通に考えて乗れるわけないでしょう。
こんな誰かもわからない、しかもあやしい人の車になんてさ。
「チッ……」
「……ぅわっ!」
吐息混じりの舌打ちを放ち、あたしの腕を掴むと無理やり車の中に押し込んだ。
ちょ、ちょっと!?
すかさず自分も反対側に回り込み、運転席に座る。
な、なんなのこの人。

