そして、今に至る。
「…んっ…」
暗闇に熱い息遣いだけが響いている。
初めは啄むように重ねられた唇。
あたしの唇を覆うように、優しくなぞる。
突然、細く尖らされた舌が強引に唇を割って入ってくる。
「…ふぁっ…」
その蕩けるようなキスに、私はなす術がなかった。
「はぁ…はぁ…」
ゆっくりと唇が離れる。
荒い呼吸を整え、我にかえった。
あたし、イマ何した?
今日、初めて会った男。しかも、名前も知らないような奴に。
こんな、どこも分からないような場所で。
最悪だっ。
こんな奴にキスされた自分が。
「ど?分かっただろ?」
でも、やっぱり1番最低なのはコイツだ!
口をごしごし服で拭いながら、これでもかってくらい睨みつけてやった。

