その重い沈黙を破ったのは意外にも男の方だった。
「行くぞ」
「…えっ!?ちょ…」
突然腕を捕まれ有無を言わさぬ赴きで暗い路地裏を出る。
ちょ、ちょっと待ってよ。
あたし今日色んな奴に振り回されてない?
もう、和也さんといいこの男といい何なのよ。
いったい。
あたしはこの男についていっても大丈夫なのだろうか。
さっきあんなことにあったばかりなのにもっと警戒心を持つべきなのだろうか。
暗い道には人もおらず、まさにおばけでも出てきそうな感じだ。
不気味さにぶるっと身の毛がよだつ。
男はあたしの手首を引っ張りずんずん足を前に進めていく。
止まろうと思っても、腕を引っ張られ足が勝手に進んでしまう。
メイン通りを外れ、少し歩いたところに駐車場があった。
あたしは腕を引っ張られながらその男のスピードに早歩きでついていくことしかできなかった。

