「ちょっと、誰よ。この子!今日は私の同伴なのよ!?」
そう言ってまたあたしを品定めするような目で上から下まで隅々まで見る。
粘着力みたいにねたねたしたような視線が降り注ぐ。
キーキーうるさいんじゃぁぁぁ。
この魔女がぁぁぁぁ。(爪が魔女みたいに長いから)
「ごめん、綾菜。今度埋め合わせするから。今日は帰って」
やさしい言葉とは裏腹に、女の腕を振り払いながら、うっとおしそうな顔をする男。
それでも納得がいかない様子の女に耳元で何かを囁いた途端、女の顔はボンッと赤くなって。
「な、なによ!わかったわよ。今度穴埋めしてよ、絶対!」
強気な声で言い放ち、またヒール音を鳴らし来た道を戻っていった。
魔女を撃退した最後の囁きはいったい何だったんだろう…とかどうでもいいことまで考えてしまう。
まさに嵐が去った後のような静けさだとあたしは思う。
さっきの魔女が去った今、男とあたしの間には重い重い沈黙が流れている。
それはもうどろりとした重い空気が。

