眉を寄せ、険しい表情の和也さんがあたしから離れ、男の方へ向かって歩き出した。
そして男の隣を通り過ぎる瞬間。
「覚えてろよっ!」
と、負け犬の遠吠えらしき声が聞こえた。
和也さんって見た目とは違って案外ヒビリだったんだ。
な―んて。失礼か。
なにはともあれ助かったぁ…。
「はぁ――」
遠くから安堵したような男の深いため息。
男が頭をクシャッと掻いたのが影でわかった。
この男は誰?ってか何者?
あたし、助けられたんだよね?
ちらりとまた男に視線を戻す。
男はポケットから煙草を取り出し、口にくわえてライターで火をつけた。
白い煙りがぼわんと浮かびあがって弧を描く。
そしてゆっくりとあたしの方へ足を進めて来る。
煙草の煙りが暗い闇によく映える。
男はあたしの目の前まで来た所で足を止めた。
「おまえ……」
男が言葉を発した瞬間

