カカオ100%





 閑静な路地裏に響き渡る低音の声。


 それとほぼ同時に目の前にある和也さんの瞳が動く。


 その視線の先にはスーツ姿の男らしき人物が立っていた。


 街灯の光が反射して男の顔がよく見えない。


 けれど、その低く掠れた声からは多少の怒りが感じられた。


「は、あんた誰?」


 こちらからも低い声。

 あらら。和也さんご機嫌ナナメだよ…。


 伸びていた手を縮め男の方へ向き直す和也さん。

 その目はしっかりとその男を捕らえていた。


「こんなとこ誰かに見られたらやばいんじゃないですか―?お・に・い・さん♪」



 携帯をパカパカと開けたり閉めたりを繰り返して、まるで和也さんを挑発してるみたいだ。