何処にでもあるラブストーリー

深夜を回った渋谷の街では、この年に流行するデザインコートを買わせるための冷たい風が吹き始めている。 

秋の装いの街路樹は、たくさんの商業的な照明に照らされ、音もなく葉を揺らす。 街角を横切る車は短いクラクションを何度となく鳴らす。 
 
赤から青に変わる信号を待つ人々は、ゆっくりと歩きだし、小さい靴音を無数に重ねて、この街に響かせる。 奈緒子は、その間じっと黙っていた。

奈緒子は、細い右手のひとさし指で、彼女の涙腺を拭い、そして、口を開いた。