何か
今更だけど
期待してしまう。
そんなわけないのに…。
「教えてやるよ。」
「━…うん。」
静かに頷いた。
………………。
…………━━。
頷いたあとの沈黙が
やけに重苦しく感じて
私は俯きかけていた顔を
ゆっくり上げた。
雅人に視点を合わせる。
逆光の関係で
顔の表情はよく分からない。
そう思ったと同時に雅人がこちらへ一歩
近づいた。
思わず後退りしてしまい
軽く後悔。
スッと左手で
私の右の頬を優しく撫でた雅人。
「きょんに頼んだのは……。」
「……。」
今なら分かる。
雅人の表情……分かる。
「好きだからだよ。きょんのことが…」
真っ赤な林檎のような顔をして
私をぎゅっと抱き締めた。
.

