「ゆっくりでいい、考えてみないか?」





そういいながら

先生はどこかの大学のパンフレットを

取り出した。






それに目を向けると


「この学校、すごくレベル高くて有名なんだが、村田ならいけると思う。評定も余裕だし、推薦でいってみるのはどうだ?」





推薦………






「さっき強制はしないと言ったが、やっぱり行った方が身のためだと思う。」



パラパラと

パンフレットをめくりながら

先生は穏やかに話す。






廊下から

男子生徒の騒ぐ声が聞こえて

先生は相談室の窓に映る

そのシルエットを目で追った後




「今時、高卒で雇ってくれる会社なんてそうあったもんじゃないぞ。念のためと言えば、言い方が悪いが…」




念のためって理由で

一生徒の将来を勧めるのは

バツが悪いのか

先生は言葉を濁した。





けど私…そのくらい分かるよ。

不況真っ只中だしね。


嫌な時代だよって、なっちゃうしね。






だけど………



進学…………ねぇ……。









.