「これ、ギア高ぇ。こぎにくぅ。」
呟きながら、
カチカチカチと
何かを3回回す音が聞こえた。
えぇ………
やっぱ私が重いからだぁー…
またまた落ち込んだ。
今日はいつもより落ち込む回数が
多い気がする。
「……ていうか、これ誰の?」
そういえば、という風に思い出した。
ギアが高いってことは
絶対、雅人のじゃないって事でしょう?
自分のなか調節あってるはずだから。
「さぁ、誰のだろー?」
「え………」
まさかのまさか。
「無断で借りてきたって言わないよね?」
ぐっと行き詰まった声を出した雅人。
「だ、だって、俺の家あるし。」
「ダメじゃん!勝手に借りて来ちゃ!」
「いいって。たぶん俺らの組の奴のだと思うし。」
「ふーん。本当?」
「え…━━た、たぶんつったろ?」
ええー
雅人の変な話のおかげで、
ずいぶん楽しい時間が過ぎた。
背中ごしっていうのが、
ちよっとした欠点だけど……
雅人の背中は、思ったよりも
男の子らしかった。
肩幅が私と比べて広くて、
しっかりしてて
見た目より、
スポーツマンって感じだった。
過ぎゆく風が本当に気持ちよくて
心地よくて
腰にしがみついてしまった腕を
ずっと回していたかった。
でもまわりにクラスの人が居たら
って思うと………
長く回していられる勇気が
引っ込んでしまう。
結局
背中を見つめるだけしか
できなかった。
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