-アンビバレント-




「ったく、世話のかかるお嬢なんだから」


あたしは車から降りてきた実流に

力の限り抱きついて実流の胸でいっぱいに深呼吸した。



「ガキじゃね―んだから…」


そう言いながらあたしの頭をポンポンしてくれた実流は

いつもより頼れるような、ちょっとカッコいい男になった気がして

あたしは今さら恥ずかしくなって下を向いた。



「なんで分かったの…?」

あたしが恐る恐る聞いてみると


「愛のチカラ?」



何事もなかったようにさらっと言って


あたしの冷たい唇に温かい実流のそれを重ねた。