チラリと俺を見上げたももの視線を避けるように、床に腰を下ろした。
相変わらず向けられる視線にもうんざりしてきていたし、立っているのも何だし。
壁に寄りかかるようにして腰を下ろしてみると、今までとは違う景色が広がる。
「るぅちゃんは、同じ中学の人とか居ないの?」
言いながら、俺の隣へと座ったももは、壁と俺に挟まれ、更にはその小ささのせいか、すっぽりと収まり隠れてしまったようだ。
綺麗な白いスラリとした足が、惜しげもなく晒される。
立っていた時はももを見下ろす形になるせいか、足なんて目に入ってこない。
そう思うと、周りの奴らの熱い視線が、なんだか卑猥な物にすら思えてきてしまい、思わず周りに視線を向けた。
予想通り、絡まる視線。
まるで、何でてめーなんかが隣に居るんだよ、とでも言うような物と、慌てて逸らされる視線。
うん、俺、お友達できるのかな。
まあその前に、俺に近付く+俺と仲良くなる=もも。と言う、何とも簡単な方程式でも出来上がっていると思う。
実際、入学式での名前すら未だに分からない奴とのあのやりとりが、良い例だろう。
「同級生?いねえよ」
「え、居ないの?るぅちゃんの中学どこ?そこから受けた人居ないんだあ」
そう言えば、俺の出身の事なんて何も話していなかったな。
別に言いたくなかった訳ではないんだけど、話すタイミングも話題もなかった。
「俺地元こっちじゃねえんだ。だから知り合いも、こっちで働いてる兄貴ぐらい」
何となくポツリと言った言葉に、ももが驚いたように俺を見つめる。
「るぅちゃんお兄さん居るの?」
そんな顔さえも可愛いなんて思ってしまう俺、痛い。

