騒がしい集団を乗せた車は、夜の街を走る。
自然と俺の隣には、小さなもも。
車が揺れ動く度に、小さな体があわせて揺れる。
明るい街の光が、流れるように景色を滲ませ、そんな光にももが溶け込んでしまいそうだ。
賑やかな車内とは反対に、ももだけが置いてきぼりのようで、ここだけが雰囲気が違って感じる。
窓の外の景色を見つめるその表情は、隣に座る俺からは伺い知れなかった。
「…楽しいか?」
「え?」
「外。ずっと見てるから」
会話の突破口なんて、考えても思いつかない。
だから、思ったままに言葉にしてみた。
いつかの再現のようで、少しだけ懐かしく感じる。
また、虫の卵とか言ったりしたら、本当に出会った時の再現だな。
なんて思いながら。
「流れ星も、これくらいのスピードで消えてくれたらなあ…って」
「……流れ星…?」
全く会話の意図が見いだせず、オウム返しに聞き返す。
それでも、ももはただひたすらに、外を見たままこちらには振り向かない。
「街の光が、流れ星みたいだなぁ…って」
「ああ…なるほど」
見えなくもない…かな。
少し疑問だけど、これは言わないでおこうか。
そんな事を考えていた俺の耳に、再びももの甘い声が届く。
「本物も、これくらいの速さで流れてくれたら、願い事三回唱えれるのにね」
その言葉に、俺は思考がストップしてしまうのを、リアルに感じた。

