「さてと…そろそろ帰るか。親御さんも心配するだろう?」
慶兄の言葉に、一瞬にしてあの日の出来事が蘇る。
初めて2人きりで下校した帰り道。
俺の中ではデートと括られているけれど、きっとももからすれば、ただのお茶ぐらいなんだろうな。
深い事は分からないし、人の家庭の事情なんて様々だ。
でも、少なくとも、前回の事でそれを垣間見てしまった気がする。
なんとなくももが心配になり、チラリと目線をももに向ける。
周りは相変わらず騒がしい中、やっぱりももだけが1人浮かない表情をしていた。
きっと、顔に出さないように必死に周りに耳を傾けているようだけれど、俺には、隠しきれないモノが表れているように見えてならない。
やっぱり俺には、どうしてもそう感じてしまうんだ。
「俺帰りたくねえー!!宗太泊めて♪」
「帰れ変態」
ももがそう言ってくれるのなら、そう望むのなら、今すぐにでも連れ去ってしまうのに。
やっぱり俺は、意気地なしだ。
自分1人の気持ちだけでは、動く事すらできないから。
ももの一言さえあれば、なんて。ずるい人間なんだ。
「じゃあ行くか。送ってく」
「宗太のイジワル!!じゃあ…るぅ泊めて」
コイツは…帰りたくない理由なんて絶対ないだろう。
一体何がしたいんだよ。
「…慶兄、一番初めに降ろすのは龍雅だから」
「そうか。頭に入れておく」
「なーんだよおー!!ちょっとみんな冷たすぎねえか!?」
龍雅が楽天家すぎるんだ…なんて、内心呟いておいた。
会計を済ませ外に出てみると、辺りはすっかり暗闇に覆われていた。
そんな中、一際大人しいももが、余計に気にかかってしまうのだった。

