「お前も彼女、できるといいなあ」
「……。」
「…睨むなよ」
慶兄の言葉に対して、どう答えればいいのか、とっさに浮かばない。
思わず無言で慶兄を見つめてしまったが、慶兄は否定とも肯定とも受け取ってはいないだろう。
それどころか、若干俺の反応で楽しんでいるようにさえ思え、胸糞悪い。
ももとは、付き合うどうこうの話ではないんだ。
ただただ、好きと言う気持ちだけで、そんな事を考えてる余裕なんてない。
「るぅに彼女か〜。それも面白いなあ」
「お…面白い?」
待て。何で俺に彼女ができたら面白いんだ。
俺はそんな事言っちゃう宗太に彼女ができた方が面白いぞ!?
「確かに〜!!るぅが甘えん坊になる所見てえ〜!!!!」
「なんねーよ!!見せねーよ!!」
「見せねえって事は、なるんだな」
「だから慶兄!!人の揚げ足を取るなよ!!んなモンならねーよ!!」
なんなんだコイツらは!!
俺で遊ぶんじゃねえ!!
甘えん坊って…!!
クスクスと笑う気配に、自分の顔が赤くなるのが分かった。
よりにもよって、ももの目の前で可笑しなレッテルを貼られてしまったようだ。
全力で撤回しようもんなら、余計に可笑しな事を言われて、更に変なレッテルを貼られてしまうに違いない。
そう思った俺は、これ以上の無駄な抵抗は辞めて、ぐっと言い出したい感情を飲み込んだ。
だがしかし。
「私も見てみたい〜。るぅちゃんが甘えん坊になる所」
「だはははは!!良かったなるぅ!!ももちゃんも見てくれるだってさ!!だはははは!!」
「……。」
素直に喜べる訳がなかった。

