でも。
あまりにも静かな事に、思わず隣のももに目を向けた。
そして、嫌な感覚に胸が支配される。
ぼんやりと、何か考えるような横顔に、瞬時に栗本が浮かんでしまう。
いつもに増して、食事のスピードが遅いももに、俺は嫌な感覚で眉をひそめる。
「…もも」
多分、俺は焦っていたんだろう。
あいつにできて、俺にできない事に、どうしようもない程気ばかりが焦っていたんだ。
決心したはずだったのに。
ももが好きだと、奪ってやると。
でも、俺は小さい男だったんだ。
「…えっ?」
意識もないままに、ももの名前を呟いていた。
そんな声に、ももがハッとしたように振り返る。
ピンクに薄く染まる頬に、柔らかな唇。
潤んだ黒眼がちな瞳が、俺を吸い込もうとする。
「デザートは?」
「食べるよっ」
「……そか」
いつまで俺は、この気持ちを押し留める事ができるのだろうか。
俺が気持ちを伝えたら、俺の事もぼんやりする程考えてくれるのだろうか。
何を口にしても、味なんてしない。
俺は、こんなにも弱い人間だったのか。

