イライラする。
不甲斐ない自分に、腹が立ってどうしようもない。
思わずチラリと視線を向けると、ちょうど栗本に連れ出されるももと目が合う。
戸惑うような、困ったような。
その目は、明らかに助けを求めていた。
「おおい!!なんだよ!!どうしたんだよ!!」
「なにアレ!?もも連れてかれちゃったけど、どうしたの〜!?」
授業中の出来事を知らないみんなは、口々に驚いたようにそんな事を言う。
中でも、珍しく龍雅が本気で驚いたような、戸惑った表情をしている。
もちろん、普段ポーカーフェイスの宗太でさえ、驚きを隠せないでいた。
そんな顔をされると、益々事の重大さに萎えてくる。
ようやく教科書やらを片付けだした俺を、誰もがじっと待った。
そんな中、溜め息と共に俺は口を開いた。
「さっきメモが回ってきた。あいつからあいつに」
名前なんて、そこに入れたくない。
だからあえて、そう言った。
「多分、呼び出しだろうな」
俺の決定的な言葉に、みんなが渋い顔をする。
思いきり、隙を突かれたようだ。
前の告白事件に比べれば、その衝撃はでかすぎた。
あの時のように、体は動かなくて、むしろ力なんて入らなかった。

