ノートを取る気も起きず、ただ黒板だけを見つめた。
ももの事が気になって仕方ないのに、様子を見る事すらできない。
胸が張り裂けそうで、無意識に溜め息が出てくる。
頭がぼーっとして、体にも力が入らなくて、ただ気だるかった。
「よし、じゃあ〜今日はここまで」
チャイムの音に、教科担任が授業を締める。
ガタガタと机の音がうるさくなり、それぞれが帰る支度を始めだす。
「龍雅、お前また寝てただろ」
「おお!!だからノート取らせて〜!!」
一際元気で明るい声は、やっぱり龍雅で、その相手をしているのが宗太だ。
廊下から飛び込んできたのは美春で、あっと言う間にいつものメンバーが揃う。
そんな中、人の間を抜けるようにして、こちらに栗本が近付いてくる。
ももが気付いたように、身を固め、動かない。
緊張している様子が、こちらからでも手にとって分かるようだ。
連れ出したい。
今すぐ手を引っ張って、ここから出してしまいたい。
……なのに。
「もも、こっち…いいか?」
「…っと…えーっと…」
「2人で話がしたい」
「あっ…」
その手を取ったのは、栗本だった。
こちらの様子に気付いたらしい宗太達が、驚いたようにこっちに向かって視線を向けていた。

