**confection**





受け取ったももが、俺を見ているのが分かる。


そんな視線から逃れるように、俺はもも側に頬杖をつく。


何の気もないように、再び黒板に視線をやるが、頭の中は真っ白だ。


胸の中がぐちゃぐちゃで、いろいろな感情が絡まり合う。


落ち着こうと深く息を吸い込んでみても、何の慰めにもならない。


短くシャーペンの芯を出し、軽く斜めにルーズリーフに押し当てる。


簡単に折れた芯が、どこかに飛んでいく。


頭の中ではいろいろ考えている筈なのに、何もまとまらない。


無駄にそんな事を繰り返している内に、隣からメモを開く音がした。



カチカチと芯を出し、プチっと芯が折れる。



俺の心を表すように、簡単に芯は折れていく。



何もしていない。

まだ、何も。



それなのに、なにも出来ない自分が、自ら首を絞めている。



隣で、ももが息を飲んだ気配がした。



俺は手から力を抜き、指先からシャーペンを離す。


気分をどん底に突き落とされたかのように、何も考えたくなかった。


悪い勘ほど、良く当たる。



だからこそ、その勘を振り払いたかった。



手紙の差出人は、栗本。


そして、その内容が、ももを呼び出すと言う事。


その最終目的は、告白。と、言う事を。




ももが今、どんな表情をしているのか。


どんな心境なのか。



考えるだけで、よく分からない感情で支配されそうだ。



手紙の内容は、分からない。


でも、直感ではあるが、間違いなく俺にとって良い知らせではない事は、明らかな気がした。



その決定打は、視線の端で捉えていた栗本が、小さく振り返ったからだった。