「慶兄、泊まってく?」
食事を終えて、食器を片付けた俺は、ソファーでうたた寝をしている慶兄に声を掛ける。
今にもうなだれてしまいそうになる慶兄は、本当に疲れて眠ってしまいそうだ。
「いや…帰って寝る」
「無理すんなよ。車だろ?」
大きく伸びをしながら言う慶兄に、背後から声を掛ける。
年の差からだろうか、その背中は頼りがいがある。
俺はまだまだ、ガキだなあ。
「そうだ。明日休みだし迎えに行ってやるよ」
「は?い、いい。何時になるか分かんねーし」
「帰宅部がよく言うな。まあいい。待ってろ」
な…なぜそうなる?
拒否権なんてもちろん与えないようなくちぶりに、返す言葉なんて見当たらなかった。
と言うよりも、口答えなんてさせてはもらえないだろう。
固まる俺を余所に、慶兄がソファーからゆっくりと立ち上がる。
そしてそのまま、振り返ったかと思うと怪しく微笑んだ。
「不良のお前が、足繁く通う学校を見物しに行ってやるよ」
「不良じゃねーよ。どこが不良だ」
「頭」
「………。」
俺の表情を見て、満足げに笑った慶兄が歩き出す。
その後をしぶしぶ付いていき、俺は玄関まで重い足を運んだ。
「ここでいい。早く風呂入って寝ろよ」
「あぁ。慶兄もちゃんと休めよ」
「分かったよ。じゃ、また明日な」
靴を履いた慶兄が、振り返って手を挙げると、玄関を開けて出て行った。
嵐のようにあっと言う間に去っていった慶兄に、俺はよくやく大きな溜め息を吐き出せた。

