黙々と焼きそばを運びながらも、慶兄の視線が向けられている事に味なんて感じられない。
それ程までに、俺は動揺している。
「いいな。青春」
「ごふっ…」
「お前もやっと、恋らしい恋をしたのか〜」
「ごほっ…だっ、ちがっ…ごほっ」
こっちの気持ちも関係なしに、慶兄は勝手に完結させてしまう。
と言うか、勝手に納得してしまったようだ。
これ以上余計な事を言わない方が、今後のためだ。
でも、ここで俺自身が頑張らなければ、後からが大変に違いない。
「そんなんじゃねえよ」
自分を落ち着かせるように、ゆっくりと口を開く。
一口お茶を口に運ぶと、その冷たさにふぅと息を付いた。
改めて思い返してみても、兄弟で恋愛の話なんてした事もない。
だから余計に、こうやってどう接していけばいいのかも分からない。
それに、誰かをこんな風に想った事もない俺は、どう振る舞えばいいのかも分からないんだ。
チラリと慶兄を見ると、やっぱり穏やかな微笑を浮かべた慶兄と目が合う。
げんなりした気で胸が一杯になるが、それをぐっと我慢した。
「俺が言う事じゃないかもしれないけど」
「……な、なんだよ」
改まったように言う慶兄に、思わず身構えてしまう。
どんな言葉が出てきても良いように構えてみても、きっと俺にはかないっこないんだろうけど。
そんな俺を余所に、すっと視線を外した慶兄が、ゆっくりと口を開いた。
「恋ぐらい普通にしろ。お前の人生だろう?もう十分だ」
「………」
慶兄の言葉に、胸が締め付けられた。
すべては、慶兄にはお見通し。
やっぱり俺は、慶兄には適わないらしい。

