言われてみれば、慶兄の女関係に興味なんて持った事、一度もない。
確かに年齢差もあるが、それはたいして差し支えない。
興味があれば聞く。
興味がなければ聞きもしない。
話の流れで、いくら興味がなくても聞くべき場合は聞いたりもするが、今までの話の下りからしてそういった訳ではないんだ。
「いや?…なんとなく」
「ふーん…なんだ、もう彼女でもできたのか?」
「いねーよ」
できても言わねえよ。と言う思いを込めて、そう告げる。
言ったら言ったで、面白がられて良いおもちゃにされるだけだ。
そんなお役目、まっぴらゴメンだ。
「…そうか」
何だか少し含みを込めた言葉と共に、背後から包丁のテンポ良い音が響きだす。
そんな音を耳にしながら、着替えを済ませた俺はテレビのリモコンを押した。
途端に賑やかになる室内と、人の気配。
それがまた、気の知れた家族と言う事で、気分も落ち着く。
最近、なんだかやたら気を張る事が多かったせいか、久々に気持ちが緩んでいくようだ。
ぼんやりとテレビを見つめても、何も頭には入ってこない。
気が付けば、屋上での出来事がぐるぐると頭の中を駆け巡る。
突拍子もない自分の行動を改めて思い返してみても、やっぱり驚いてしまう。
それと同時に、悶えてしまいそうな程の感情が、もやもやと胸を支配する。
あ〜!!!!なにやってんだよ俺はー!!!!
そう、心の中で叫びながら、虚しい思いにふけた。

