「なに?浮気でもした?」
「いや?どっちかと言うとされた方」
「……はあ?どーゆう事?」
珍しく感情的な俊に笑いを堪えつつも、俺はポツリポツリと話を紡ぎ出した。
思えば、俺は最低な恋愛ばかりしてきたんだ。
「本気じゃなかった…って言うか、好きにはなろうとはしたんだけど」
「うん」
「結局、好きとかよく分かんねーまま付き合ってて」
「ふーん」
「それで結局、向こうから離れてくって感じだったかな」
今思えば、本当に最低な事を繰り返していたと思う。
好きとかそんな気持ちも分からないまま、俺は付き合っては別れてを繰り返していたんだ。
「んで?浮気されて怒ったりはしなかったの?」
「…全く」
「そりゃ最低だなあ〜」
くくっ…と笑った俊に、胸に苦い思いが積もる。
俊の言いたい事がなんとなく分かり、思わずそのまま口ごもってしまった。
「追い掛けて欲しかったんだろーな。マジになってほしくて」
「多分な」
短く同意をして、気を紛らわすようにして缶を持ち上げた。
だが、全く手応えが感じず、飲み干していた事に気付きそっと元の位置へと戻す。
「んで、どう?マジになるって」
テーブルに置いてあった、まだ封の空いていないペットボトルのミネラルウォーターを俺に差し出しながら、俊が笑ってそんな事を言う。
それを受け取りながらも、隠しきれない感情を顔に貼り付け、目を背けて溜め息を吐き出した。
「…どうもこうもねえ……」
本当に、最低だったと、再確認できたから。

