気が付けば、時刻はどっぷりと深夜になっていた。
雑魚寝するように転がるのは、俺と俊以外の、全員だ。
さすがの宗太でさえも、俊の酒豪っぷりには撃沈してしまい、龍雅にいたっては泥のように眠っている。
そんな中でも、美春はやっぱり俊にはベッタリで、寝ていても俊の傍らに寄り添うようにしてあどけない寝顔で目を閉じている。
「どーよ。美春とは」
結局、生き残っているのは俺と俊。
いつもは龍雅達同様、撃沈しているはずなのに、今日は相変わらずなんだか酔えずにいた。
自分でも、酒にそんなに強くない事は自負している。
こんな日もあるもんだ。
「幸せ」
「…あ、そ」
嫌味な程即答した俊に、言葉も無くしてしまう。
穏やかに美春を見つめる俊からは、本当に美春を思っているんだと感じられる。
そんな風に美春を見つめる事ができる俊を、悔しい程羨ましく感じた。
「でも」
「…ん?」
缶を傾けた途端に発せられた言葉に、チラリと横目で俊を見下ろす。
心なしか、打って変わって表情が冴えない様子に、無言で缶をテーブルへと戻した。
カン、と言う小気味良い音が寝息に混じり、もう飲み干してしまった事が伺える。
俊の手元には、しっとりと汗を掻いた缶が握られていて、その表情からは俊の気持ちは伺えなかった。
「…不安になる。すんなり手に入ったからかな…美春が時々、消えちゃうんじゃないかって思う時がある」
「………ノロケか」
視線を上げない俊に、ポツリと呟く。
でも俺の本音は、言葉とは裏腹だった。

