「ももね、前より笑わなくなったの…」
ポツリと零れた美春の声に、彷徨わせていた視線をピタリと止められた。
一気に今までの考えていた事なんかが吹っ飛んで、思わず体を起こした。
「…前より?」
「あ…、前って言ってもね、本当に昔!!…でも、中学入ってから酷くなったって言うか…」
苦笑いしている美春からは、少しだけ憂いを含んだように見える。
美春から語られるももの話に、何かが俺を縛り付けたように身動きが取れなくなる。
うーんと唸る龍雅とは対照的に、言葉なんて出す事もできない。
小学生の頃から、既に頭角を現していた事に驚きはしたが、納得と言えば納得だ。
「美春、いっつもね?ももに勉強教えてもらって、高校だってもものお陰で入学できたんだし」
「すげえ頼りになる専属かてきょーだな」
「えへっ、でしょう?……でも、ももは全然おばさんとおじさんには褒められないみたいで」
ニコッと笑ったかと思うと、悲しそうに俯く美春。
間近でももをずっと見てきたからこそ、そんな思いが痛い程伝わってくるようだ。
「すっごく寂しそうな顔するようになったの。もも、すぐ我慢しちゃう子だったから…余計に我慢するようになっちゃったの」
美春の言葉を聞いた途端、鮮明に蘇ってくる光景に、胸がざわつく。
冷めたようにも、なんだか諦めてしまったようにも感じた、ももの寂しそうな横顔。
その裏には、ももの孤独を垣間見た気がした。
「高校がね、受かった時にね…お母さん達は、私じゃなくて世間体と成績しか見てない、って…初めてももがそう言ったの聞いたんだよね……」
まだ赤ん坊の頃、早く親元から離された愛情不足の犬は、よく吠える。
……ももは、鳴く事すらやめてしまったのかもしれない。

