結局、おばさんに挨拶をするどころか、ももに声すら掛ける事もできないまま、2人は車に乗り込んでしまった。
龍雅が1人で話を率先してしてしまったおかげか、美春と龍雅以外まともに挨拶もできずに過ぎてしまう。
遠ざかる車の赤いテールランプを見送りながら、俺は大きく溜め息を吐き出す。
話したい事はいっぱいあったはずなのに、会話にすら交じる事もできなかった事に、多少の悔いが残る。
龍雅のせいにできるものなら、どれだけ良いやら……。
「おいーるぅ頑張れよお!!」
「…お、お?」
俺…?
頑張れよって……。
訳が分からないまま固まる俺の代わりに、宗太と俊が龍雅に鋭く突っ込みを入れる。
「頑張るもなにも、お前が張り切りすぎるからだろう」
「あらっ」
「だよな〜。あれじゃ俺らですら会話にすら入れないよ」
「まあっ」
まあ、確かにそうなんだろうけど。
でも。
ほんの少しの勇気すら持てなかったのは、自分だ。
その会話の前に、ももに声すら掛けられない自分が、情けなくて仕方なかった。
「俊ちゃんまで紹介してえ!!私の俊ちゃんなんだからね!!」
「そんな怒るなよお〜」
でもま、場が盛り上がったには違いない。
それはそれで良しとしようではないか。
ただ、やっぱり俺が気掛かりで仕方のない事は何よりも、もも自身の事だった。

