おばさんの言うアップルパイのお土産は、ご家族にと言うくらいならそれなりの量に違いない。
そう察した俺は、素直に断りを入れる。
「あの、俺一人暮らしなんで。だからその――」
そんなに沢山は……とは言い切れなかった。
「えぇっ!!松風君一人暮らししてるの!?すごいわねえ!!」
「すげえ!!憧れる〜!!今度お邪魔していいですか!?」
「あ…はあ…」
圧倒的されてばかりで、間抜けな返事しか返せない。
肝心な俺は置いてきぼりに、浴びせられる声。
やっぱり圧倒されるばかりで、若干冷や汗なんかもかいてきた気がする。
「じゃあ松風さん、折角だし寄ってって下さいよ。俺松風さんと語りたいですし!!」
「…あぁ」
初対面の俺と……一体何を語るんだ。
「良かった〜♪アップルパイ食べてくれる人ができて!!」
「いえ…逆に夜分遅くにすみません」
俺は試食係りですか……。
賑やかな2人とは反対に、ももが静かすぎる。
なんだか怒っているような、呆れているような……なにかを堪えたような。
整いすぎた綺麗な横顔は、なんとも言えないような表情をしていた。
月明かりがももの顔を青白く照らす。
輪郭を象っていくように、俺の疑問が徐々に形を造っていく。
これ以上関わったら…知ってしまったら、俺は間違いなく離れられなくなる。
踏み込む事を躊躇する時間なんてない。
それどころか、俺の答えなんて始めから決まっていたのかもしれない。
もっと知りたい…近付きたいから…ももに。

