でも、そんな表情は一瞬で、すぐに愛嬌のある笑顔へと変わった。
「あら、そうなの!!この子がお世話になってます」
「え…あ、いえ…とんでもないです」
勇磨が大きな声で騒いで?いた理由。それは、気付かせるため。
もしかして、ひょっとしなくても、こうして俺がももの親と鉢合わせするために企んだのだろう。
理由は全く予想もつかないけれど。
「松風君もご飯食べてないんじゃない?良かったら食べてってよ!!」
「大丈夫です。あ…すみませんが、ももさんと済ませてきました」
「あら、そうなの…?じゃあせっかくだし、お茶でもしてって」
「……え!?」
え?え?……どんな展開…?
「ブッ…」
「………。」
チラリと視線を向けると、自転車に跨ったまま視線を落として肩を揺らすももの弟、勇磨。
無言で視線を向けた俺に気が付いて顔を上げても、必死に笑いを堪えているのが隠し切れてない。
「ちょっとお母さん…いきなりそんな、迷惑だから」
「そう…よねえ?ご家族も心配しちゃうわよね」
何だかそう言うももの口調は、淡々と落ち着いていて、その反面冷たく感じる。
壁を造っているような、キッチリと線を引いたような態度は、感情を感じ取られる事すら拒否しているかのようで。
「今日ね、アップルパイ焼いたのよ!!せっかく作っても、ももと勇磨食べてくれないし」
「そんな理由で母さん松風さん誘ったの?」
ひょっとして…もものお母さんは、天然……なのかもしれない。
「じゃあ、お土産に持ってって!!ご家族の方に!!」
年齢を感じさせない笑顔と声に、あどけなさを感じた。

