「帰りたくねえなら付き合う。けど、制服じゃ…な?」
ももがそんな事を言うなんて。
でも、無理に聞き出す事はしたくない。
少しでも気分が紛れるのなら、俺は何時間でも付き合おう。
「……ごめん。帰ろっか?」
少し恥ずかしそうに微笑むももが、何故だか痛々しく感じる。
引き止めて、連れ出してしまおうか。
俺の家なら、誰にも邪魔されない。
何時間でも………。
「送る。ナビしてな」
「ナビって」
「ナビだろう?道わかんねーし」
「案内でいいじゃん」
ようやく普通に笑ったももに、笑いと共に溜め息を吐いた。
ツボはよく分かんねえけど、とにかくももが笑ってくれて良かった。
いつもなら、なにも気にしないで行動してた。
でも今は、こんなにも人の事を気にして行動する自分に、少し驚いたりもする。
これが好きと言う事なのだろうか。
自分本位ではなく、相手の為に。
なにかできないか、力になれないかなんて、そう考えるんだ。
住宅街を歩いてると、一際大きな綺麗な家の前で、ももが速度を落とす。
窓からは灯りが漏れて、手入れの行き届いた広い庭を照らしていた。
「ありがとう。ここだから」
「いや、俺が付き合ってもらったし」
ガレージには車が納まり、家主の帰宅を表しているようだった。

