街路樹と街灯の並ぶ道のりを、ももとゆっくりと歩く。


昼間の過ごしやすかった春の気候は、夜になると肌寒く冷える。


本当ならば、この肌寒い風からももを守る壁になれたら。なんて、叶わぬ夢を見る。



なんだか心なしか言葉数の少なくなったももを、ちらりと伺う。


少し俯き加減の横顔は、その感情を読み取れない程に冷たく感じる。



冷たく感じるのに、それでいてゾッとする程綺麗な横顔。



何を考えているかなんて、全く予想もできなかった。



「…帰りたくない」




ポツリと呟かれた言葉は、すぐに空気に溶け込んでしまう程小さく、気付かないまま聞き逃してしまう程の声だ。



一瞬聞き間違えかと思い、次の瞬間には心臓がトップギアに切り替わる。



え…?い、今…確かに……。



帰りたくない?帰りたくないって………。



「も…もも?」




それは…俗に言う………殺し文句ってヤツか?



俺の声にハッとしたようなももが、慌てて顔を上げる。


「や…えと、なんでもないから」



両手であわあわと手を動かしているが、顔に動揺しまくった様子が思い切り出ている。



これは…男と女としてのセリフか。


それとも……?



そんなの、考えるまでもなかった。




「別に。無理しねーでいいし」



「え…その…」



なんとなく、繋がってしまった気がする。


ずっと気になっていた事。


それがなんとなく、形をぼんやりと象った。