「いらっしゃいませ、二名様ですか?」
明るい学生風のバイト君が、やけに元気よく接客する。
促されるようにして喫煙席へと案内されると、結構な客数に店内は大きなざわめきで湧いていた。
窓際に案内された、2人じゃ申し訳ない程の広さのテーブル席。
別に狭くてもいいのだが…と思った所で、どこも満席なので呑み込んだ。
向かい合わせで席に着くと、頭を下げて速やかに去るバイト君。
そんな後ろ姿を見送りながら、ガサガサと音のした方へと向き直った。
「ん〜…なににしよう…」
「デザートは?」
「むっ…それはまだ後でいいのー」
「くっ…食べるんだ」
素直な反応に、思わず笑ってしまう。
顔を赤くさせ、少しむくれたように頬を膨らませて、唇を尖らす姿がなんとも言えない。
睨んでるらしいが、真っ赤なせいか迫力も何もないんだけど。
こういう計算もない態度に、男は滅法弱いって、ももは知ってるんだろうか。
ももの性格からして、それはなさそうだけど。
適当にメニューを決めて、バイト君に注文を伝える。
ももはスタミナ丼。俺はチキン南蛮定食。
意外とガッツリと男らしいメニューに、やっぱり嫌みも何も感じなかったが、あまりにも意外で驚きもした。
やっぱりこういった着飾らない所が、ももの最大の魅力なのかもしれないし、そこを余すことなく見せてくれるのが、人を引き寄せるのかもしれない。
近寄りがたい雰囲気すらあるのに、こうして近くに寄れば寄る程、親近感のわく隙だらけの姿。
やっぱりライバルは多いなあ…なんて、目の前のももを見つめながら、穏やかな気持ちで呑気に考えていた。

