初めて経験した。
昔、篠岡が言ってた。
『水畑とはできるだけあたりたくない』
その意味が分かった。
あと、健がレギュラーを篠岡の次に取った理由が―…。
バッターボックスには行った時の健は恐い。
目が真剣だとか、オーラが違うとか、
そんなもんじゃない。
とにかく恐いんだ。
とにかく思った。
『打たれる。こいつには絶対三振には打ち取れない』
瀬田は俺にサインを出そうとしてるのに、俺は健を見ていて、健は俺をずっと見ていた。
「……。」
「……。」
「河野、早く投げろ」
監督の声に反応して俺は投げるモーションに入ろうとした。
瀬田のサインはインロー(インロー:内角低め)にシュート。
「……。」
なんとなく…持ってかれるって思った。
だから正直に首を横に振った。
次のサインは……。
『低めにフォーク』
そぅ…健には1球目からフォークだ。
フッと息を吐いて構えた。
全身に神経を行き渡せた。
「っ…」
投げた瞬間、よしって思った。
けっこういい感じだ。


