「坂城 漣」

「はい」





【下野宮高校入学式】

春にしてはまだ肌寒い
桜で一面のこの季節。



今日は公立高校の
下野宮高校の入学式日。



今年高校一年になった漣は名前を呼ばれ
セミロングの髪を揺らして立ち上がる。


漣の名前があがると同時に
各保護者が騒めいた。


《あら、坂城さんって
あの巫女継ぎよね》


《本当…‥あとで坂城さん宅にお祝い金しなきゃね》


保護者が潜めて言う会話は
1組に並んで立つ漣の耳に筒抜けのまま。



「丸聞こえだってば」



漣はいつもの事のようにため息をつく。