ため息を吐きながら、俺の鞄を手渡してくれた。財布とケータイしか入ってない…は、以前の話。今の鞄に増えたものがある。電子辞書だ。読めない漢字が出て来る度に赤坂に尋ねていると、当然自分の勉強にも集中出来ないらしく、一言「電子辞書買えよ」って言われて…いつもなら毎週買うマンガ雑誌を止めて、買い食いを控えたらすぐに金が溜まった。


その金で服よりも初回限定のアルバムを買わずに俺は、電子辞書を手にした。ちょっと前までの俺だったら、考えられない事だ。


「…あ、あのさ…妻ちゃん? さっきの…あれ…」


俺はひっじょーに聞きづらい事をチラッと聞いてみた。だって気になるじゃん。妻ちゃんがどうして、原のプライベート的な事を…隠し事を知ってるんだ?


「……あぁ、あれ? …内緒だよ」


「え…な、何で!?」


「将ちゃん…もう、いいよ。私から話しとくから…」


小さな声で、でもハッキリと喋る赤坂。


妻ちゃんの顔をチラリと見た時に、俺が勢いで殴った頬を眉を潜めてすぐに逸らした。


「…行くよ」


あ~、前もこんな事があったなぁ。グイッと腕を掴まれて赤坂は歩きだす。