「・・・・・・人を見下ろして、元気にならないでください」

高志は、ジト目で弓倉を見る。

弓倉は、さらに背筋を伸ばしてみた。
身長差が広がる。

いい感じだ。

「先生、僕の話聞いてますか?」

「うむ、下手に顔を近づけているよりよく聞こえる」

「とにかくボタンです。ボタン。返してください」

「そうだな。まずはひとつ状況を改善しよう」

弓倉は、こんどこそ高志の手の中にボタンを返した。

高志は、また弓倉に取り上げられないようにしっかりと両手で包む。

「ふう」

ほっとした顔。
そして、泣き顔が笑顔に。

弓倉は、まじまじとその変化を観察。

「いい顔だ、少年」

さっきと同じようなことを言う。

高志は、危険を感じてばっとボタンを持った手を引いた。

「だ、だめですよ。もう意地悪はさせてあげません」

「させてあげません、か」

弓倉は笑う。